RFF無線日記(リスタート版)

アマチュア無線局JR7RFFの無線日記 各地の移動記録や天文・星なども

星を見よう2…9「南極老人星 カノープス」


 今回は,見えるか見えないかぎりぎりのところにある星の話です。りゅうこつ座のα星カノープスを紹介します。カノープスは地平線ぎりぎりに見える星です。高度が低いので,夕日と同じ理屈で,地球上の大気の影響で赤く見えます。そういうことからか,中国ではカノープスは縁起のいい星,見れば長生きできるというので南極老人星と呼ばれているそうです。
 私たち気仙沼天文研究室では,かつて宮城県からのカノープスに挑戦したことがあります。高いところに行けば見えるかも知れないと考えたのです。なんと,夜の栗駒山に登ってカノープスを見ようと試みました。理論上は栗駒山から見える可能性はほとんどありません。でも,万が一見ることができたら,それは奇跡です。とりあえず挑戦することにしました。カノープスが見えるのは冬です。冬の栗駒山,しかも夜に登ることは登山の素人集団では考えられません。計算してみたら,初雪が降る前の10月10日前後であれば,午前4時半頃に見える可能性があることが分かりました。深夜の午前1時過ぎに登山開始,月がないので当然真っ暗です。懐中電灯などのライトの他にカメラや双眼鏡,三脚持参です。お湯の入ったポットも持ちました。もちろん,事前に下見の登山は済ませています。防寒をしっかりしたせいか,登山のせいで運動になったのか,それほど寒さを感じることもなく,午前4時頃には山頂に到着しました。空も晴れています。南の地平線もよく見えます。しかし,カノープスは見えません。双眼鏡でも確認できません。とりあえず,写真を撮りました。肉眼で見えなくても写真には写っているということはよくあることです。その後,写真にも写っていないことが分かりました。 
 カノープスは,太陽を除けば,全天の恒星の中でシリウスに次いで2番目の明るさ,マイナス0.74等級の星です。この星は,赤緯マイナス52.41度に位置しています。かなり南にあります。気仙沼から見ることのできる星は,赤緯マイナス51度より北の星です。残念ながらカノープス気仙沼からは見ることはできません。では,どうしたらいいかというと,南に行って見ればいいのです。単純な計算では,地球上の北緯37.6度より南に行けば地平線上に見えることになります。地図で見ると,福島市,相馬市付近が該当します。実際には,地平線近くの星は,少しだけですが,地球の重力の影響で上の方に浮き上がって見えます。南の地平線が見えるところでは,宮城県でもカノープスが見える可能性があります。ただ,これはものすごく好条件に恵まれたときの話です。確実に見えるのは福島県以南ということになります。
 南の地平線ぎりぎりのところというのはなかなか見えるものではありません。私も房総半島を中心に何度もカノープスを見るために遠征しましたが,太平洋上の霧の影響を受けたり,洋上に雲があったりしてなかなか水平線まで見通せることはありません。湘南海岸に遠征したときは伊豆大島三原山が噴火し,その噴煙のため,カノープスを見ることはできませんでした。関東南部でも2度程度しか上がりません。ですから,東日本からカノープスを見る機会はそう多くはありません。
 なかなかみることができないのでがっかりしたのか,その後しばらくカノープスへの挑戦はしていません。今年は久しぶりに挑戦しようと思っています