RFF無線日記(リスタート版)

アマチュア無線局JR7RFFの無線日記 各地の移動記録や天文・星なども

流星痕(りゅうせいこん)

今年のペルセウス座流星群は大当たり年でした。月がないという条件もよかったのですが,いつものように大きな流れ星もたくさん見ることができました。おかげで,写真撮影にも成功しました。観望場所を教えてくれたペンションのご主人に御礼の意味も込めて画像データを送りましたが,御礼メールが届きました。その中で,清少納言枕草子について触れていました。
 第236段「星は すばる。ひこぼし。ゆふづつ。よばい星,すこしをかし。尾だになからましかば,まいて」です。よばい星は流れ星のことです。昔は通い婚だったので,女性が「今日は来るかしら?」と待っている心情についてご主人は想像されていました。さすがです。こういうセンスがペンションの客に受けるんでしょう。人の心情など思いも寄らない私は違うところに目を付けています。「流れ星は尾がない方がいい」と書いていますが,それはなぜなんだろうと昔から疑問でした。
 流れ星は,宇宙空間にあるチリが地球に落下する際に大気との摩擦で高温になり,自由電子,いわゆるプラズマが発生して発光する現象です。チリ,流星物質が大きいときは,しばらくの間発光現象が続きます。これを流星痕(こん)というのですが,流星痕がない方がいいと清少納言は言っています。いい機会だと思って調べてみました。よばい星は,「婚星・夜這い星」という漢字をあてるようです。昔の結婚が通い婚だったので,「婚星」と書いたのでしょう。そこで気が付きました。女性のところに通うのは,足跡を残さないようにひっそり通うのがよい。と清少納言は言いたかったのかも知れません。でも,言葉は同じかも知れないけど,流れ星は痕があった方が明るくて印象的です。清少納言は星を見ないで枕草子の一節を書いたという説がありますが,私も一票入れます。「星はすばる」はいいとして,次の「ひこぼし」は?がつきます。アルタイルはそれほど明るい星ではありません。星のような男が好きだからという説もあり,そんなものかと思いますが,実際に星空を見れば,アルタイル以外にも魅力的な星はいっぱいあります。字の並びがいいから載せたという意見もあり,やはりその通りかも知れません。
また,調べてさらに分かったことがありました。流星は秋の季語だったのです。ペルセウス座流星群が見られるのは夏ですが,昔の季節で言えば,8月は秋です。ひょっとすると,ペルセウス座流星群は千年以上前から出現していたのかも知れません。ペルセウス座流星群の母天体であるスイフト・タットル彗星は紀元前からの観測データがある周期133年の彗星です。たぶん,大昔から現在の暦で8月12日前後に多くの流れ星を見ることができたのでしょう。
というわけで,流星痕の写真です。流れた後に雲のようなものが見えます。肉眼では見えなくても写真では写っています。午前2時過ぎに車から降りたとたんに大きな流れ星,もちろん流星痕付き,が流れたのですが,ひょっとしたらと思ってカメラを向けたら写っていたのがこれです。
やっぱり,理屈や名前は分からなくても,星を見て,「きれいだ」と思える感性を大事にしたいと思う今日この頃です。

真ん中のへびの抜け殻のような雲みたいなのが流星痕
上から下に流れました。
流星が流れた直後は直線ですが,大気によって流されてくねくねしています。
下の方に濃い部分がありますが,最後の方が高熱が強かったことを表しています。
右側の白い直線は人工衛星
左側に暗い流星が写っています。
人工衛星も暗い流星も肉眼では確認していません。
とにかく写真を撮ればこういうことがあるんですね。
名前や理屈が分かるとさらに深く楽しむことができます。