RFF無線日記(リスタート版)

アマチュア無線局JR7RFFの無線日記 各地の移動記録や天文・星なども

柳家さん喬落語会in気仙沼


 今年も柳家さん喬師匠が気仙沼においで下さいます。
 柳家さん喬師匠は東京墨田区の下町の生まれで,小さい頃から近くの浅草で演芸に慣れ親しんだせいか,早くから落語家を志したようです。五代目柳家小さんに弟子入りすると,その真面目な性格から熱心に稽古に励み,真打ちに昇進前からすでに次世代の旗手として知られていました。
 特に,古典落語に才を発揮し,「古典ならさん喬」と落語界では語られていたそうです。さん喬師匠は「先人が創った落語という文化を後世に伝えるのが自分の役目」と常々口にしています。そういう想いで古典落語に取り組んでいた姿を客席から熱い視線を注いでいた若者がいました。大学の落研でプロ並みの活躍を見せていた彼がどの師匠に弟子入りするか,当時楽屋の話題になっていました。なにせ自分で新作落語の脚本を書いて演じ,コンテストで優勝する即戦力の若手です。落語界に旋風を巻き起こすだろうと確信されていた彼が師匠に選んだのは,ほとんど新作落語をやらない,柳家さん喬その人でした。理由は「きちっとした落語を勉強できるから」というものでした。そして当時まだ40を過ぎたばかりのさん喬師匠は初めての弟子を迎えたのです。初めての弟子ということで普通は何でも教えたがるものですが,さん喬師匠は自分を押し付けることはせず,締めるところは締めつつ,やりたいように伸び伸びと育てました。その初めての弟子こそ現在の柳家喬太郎で,「チケットが取れない落語家」の一人として大活躍しています。本人の資質もですが,やはり師匠の育て方が良かったのでしょう。古典落語の第一人者の弟子が新作落語の第一人者というのも絶妙な感じがします。
 ちなみに,さん喬師匠の他のお弟子さんとも何人かとお会いして,実際に落語を聴く機会がありましたが,どのお弟子さんも伸び伸びと育ち,皆さん立派な噺家になっています。落語だけでなく,弟子の育て方も上手いのは羨ましい限りです。
 そして,さん喬師匠は弟子の育て方だけでなく,落語に対しても広い懐をお持ちです。人情噺だけではなく,滑稽噺も得意です。大晦日にありとあらゆる芸を使って借金取りを煙に巻く「掛取漫才」や,酒の席でのやりとりが楽しい「棒鱈」,さん喬師匠自体はほとんどお酒を飲まないのに棒鱈の酔っ払いは天下一品です。師匠の酔っ払い声の「とらさ〜ん」を聞くと,それだけで嬉しくなります。また,たくさんそばを食べられるように赤い草を用意する「そば清」など,聴いていて楽しい噺もたくさん有ります。これは,途中の説明が師匠らしくて笑えます。特に『時そば』など食べ物の噺は,小さん一門の十八番と言える食べる所作を存分に楽しむことができるでしょう。私はさん喬師匠の「時そば」を聴くと,そばが食べたくなって仕方なくなります。
 さらに,古典だけではなく,最近では新作の人情噺にも取り組んでいます。「干しガキ」は私の中ではかなり評価が高いです。いつか気仙沼で口演される日を楽しみにがんばれます。
 さん喬師匠の特筆すべき点は,やはり落語に対する姿勢だと思います。そして寄席文化を大切にしているので,上野や浅草などの定席の寄席への出演はかなりの回数になり,その数は年間二〇〇回とも言われています。その上で,毎年,外国の大学で落語を指導したりもしています。そのような活躍が認められ,春に紫綬褒章を受賞したことは私たちにとっても嬉しいニュースでした。
 そんな柳家さん喬師匠が今年も気仙沼にお出で下さいます。今年の落語会は十一月十八日(土)の午後三時から,本郷のゲストハウスアーバンで開催です。