RFF無線日記(リスタート版)

アマチュア無線局JR7RFFの無線日記 各地の移動記録や天文・星なども

祝:FO−29:20周年


このタイトルだけ見たら,なんのことだかきっと分からない方も多くいると思います。
今日は台風が近づいているので移動できません。
ちょっと長くなるかも知れませんが,FO−29のことについて書いておきたいと思います。 
FO−29というのはアマチュア無線目的の人工衛星の名前です。
命名はAMSAT(アムサット)というアメリカの団体です。
世界で一番最初にアマチュア無線衛星を打ち上げたのがアメリカで,
その際に,AO−1(アムサット オスカー 1)と名付けられました。
その後,2番目はAO−2という感じで名付けられました。
 
FO−29は,日本が打ち上げた衛星ですが,国内では「ふじ3号」でした。
ふじのFをとって29番目のアマチュア無線衛星だったのでFO−29と名付けられたようです。
ふじ3号ということからも分かるように日本では3番目のアマチュア無線衛星です。

 
ふじ3号の打ち上げは,1996年8月17日,そうです2016年8月17日で20周年になりました。
大きさは,たてよこ高さがどれも50cm弱,重さは50kgくらいです。
これが人工衛星として地球の周りを回っています。
近地点で約800km,遠地点で1320kmの軌道です。
1周106分という速さで飛んでいます。
 
この人工衛星が地上から打ち上げられた電波を中継してくれるのです。
FO−29は145MHz→435MHzに変換して中継してくれます。
144MHzという電波は電離層で反射することはほとんどありません。
ですから,144MHzでの交信は地上波がメインです。
この周波数の電波は見通し距離しか電波が飛びません。
つまり見える範囲しか電波は飛んでいかないのです。
山にでも上がらない限り,10kmも飛べば御の字です。
 
でも,そういうふうに飛ばない電波であっても,地上およそ1000kmの上空で中継してくれれば,日本全国との交信が可能になります。
実際に交信してみると,これはすごいことです。
ただし,実はそう簡単にアマチュア無線衛星が使えるわけではありません。
 
まず,最初に考えなければならないのは,いつ,上空を通過するのか?ということです。
だいたい,午前中に2回,午後に2回程度のチャンスはあります。
しかも,通過時間は約20分程度です。
最初にすべきことは,どの衛星がいつ,どの方向に見えるのかをチェックすることです。
情報は,ネットやcalsat32(カルサット32)というソフトを使います。
事前に時間をかけて詳しく調べるときは,JAMSAT(ジャムサット・日本アマチュア衛星通信協会)のページで確認します。
最近はcalsat32でちゃちゃっと調べています。
 
いつ衛星が来るか確認したら,次はアンテナの準備です。
衛星の電波は強くないのである程度のゲインのあるアンテナが必要です。
FO−29の場合は打ち上げ用に144Mhz,受信用に430MHzのアンテナを使います。
私の場合はラディックスというメーカー製のクロス八木,正面から見ると十字の形に見えるアンテナを使っています。
長い部分でも1m程度なので,アマチュア無線のアンテナとしてはコンパクトです。
ですから,いろいろなところに持って行けるのです。

無線機とアンテナをつないだら,今度は無線機の周波数を合わせます。
打ち上げ用の周波数と受信用の周波数は違うことが普通です。
しかもアマチュア無線衛星によってもバラバラです。
無線機のメモリー機能を使えばいいのでしょうが,私は周波数一覧表を作成して無線機に貼り付けています。
 
ここまで準備ができたら,衛星が上ってくる方向にアンテナを向けて待機します。
衛星が見えるようになったら,自分の電波が衛星経由で戻ってきていることを確認します。
自分の電波を確認することをループを取るというのですが,これがちょっと面倒です。
なんせ,衛星の電波はそれほど強くありませんし,最もやっかいなのがドップラー効果です。
 
人工衛星のスピードはとてつもなく速いのです。
ですから,近づいてくるときは周波数は高い方へ,離れていくときは低い方へ変化します。
救急車が近づいてくるときと離れていくときはサイレンの音が変化するのと同じ理屈です。
 
ドップラー効果を考慮して自分のループを探します。
無事に見つけたら,交信可能になります。
でも,そうやって電波を出しているときも自分の声が聞こえる周波数は変化します。
さらに,人工衛星の見える(実際は肉眼では見えません)場所も変化しています。
そのため,受信周波数(衛星によっては送信周波数)をこまめに動かしながら,アンテナも動かすというほとんど神業が必要になります。
 
以前は,私はどちらも手動でしたが,最近はアンテナはモーターで回しています。
忙しい思いをしながら交信するのですが,自分の声が宇宙まで行って帰ってくることにちょっとうれしい思いをしますし,飛ばない電波を使って日本全国の局と交信できるのも魅力の一つです。
特に,私の場合は移動運用が大好きなので簡単な装備で多くの場所から運用できるサテライト通信は移動運用にぴったりです。
 
ただ,人工衛星は宇宙空間にあるのでその耐用年数は5・6年,長くても10年程度です。
それを思うと,FO−29の20年というのは素晴らしい数字です。
 
私がサテライト通信を始めた2007年頃には強力な電波を送ってくれたり,様々なモードがある衛星などがあって,とても楽しむことができました。
それらの衛星は,停波してしまいましたが,最近では様々な衛星が上がっています。
中には,音声でアナウンスしている衛星もあります。
145.980FMを聞いていると「Hi This is amateur radio survey Fox-1」という声を聞くことができます。
1日に数回だけど・・・
 
これを効率的に聞きたい場合は,AO-85という衛星がいつ来るかを調べればいいのです。
JAMSATのページでもいいですし,calsat32をダウンロードしてもOKです。
AO−85のアナウンスはGPでも聞くことができます。
 
とりあえず聞いてみるだけならFM衛星がお薦めです。
AO−85とSO−50というサウジアラビア製の衛星がFM衛星です。
CW/SSBモードですと,中国製のXW−2A〜2Fシリーズが意外と電波が強いので聞きやすいかも知れません。
ただし,144Mhzで受信するので,FMの混信がひどい地域もあるかも知れません。
 
サテライト通信というとなんか難しそうなイメージがありますが,やってみると意外に簡単に交信できるものです。
小さいアンテナで済むのでぜひ多くの局にQRVしてほしいと思う今日この頃です。